昔話紹介
いつも寝てばかりいる男の子がいました。ある日、その男の子が起き、山に登り、岩を押しその岩が転がり川をせき止め、その水が村の畑に流れ、村を干ばつから救いました。
材料と検証
岩は一立方メートルあたり900〜2700キログラム(この時1000キログラムだとする)である(kentiku-kouzou)。この話の川幅を、岩で塞げるぐらいなので、川が小さいとして約10メートルだとする。岩の密度を3g/㎝3、大きさを縦10メートル横10メートル高さ10メートルの立方体と仮定すると、岩は1000立方メートルぐらいで、重さは3000トンほどである。
人間の筋肉が出せる出力は、筋肉の断面積に比例し、断面積1平方センチメートルあたり、最大10キログラムの重量を持ち上げることが可能である。成人男性の筋肉の断面積の平均25平方センチメートルで、計算上は、片手で250キログラム、両手で500キログラムの重量を持ち上げることが可能だが、通常はリミッターにより、五分の一程度の力しか出せない。通常時でも、一時的であれば、成人男性で約200キログラム、成人女性で約120キログラムと高重量を持ち上げることができる。(IQより)
いずれにしろ、寝太郎の押した岩の重さはそれを遥かに超えているのだ。
また、3000トンは3000万ニュートンの力がかかり、これは2Lのペットボトル150万本分の重さと同じである。到底、人間が動かすことができない岩を寝太郎は動かしたのだ。
結論と、それにより物語はどう変わる?
寝太郎は人間とはかけ離れた、別の次元の生き物である。
あるところに、寝太郎と呼ばれている、人間と見た目がそっくりな生き物がいました。寝太郎の力は「強すぎる」を超えた次元であったため、村の人から何もするなと言われていました。しかし、ある日、寝太郎は目覚め山に登り、岩を押し、その岩で川の水をせき止め、畑に水が流れ、村は干ばつから救われました。それからというもの、寝太郎は変わらず寝るばかりであったが、村が困ったときはその別次元の力で村を助ける救世主となり、それはそれは大事にされたそうだ。
柳田理科雄のコメント
なるほど! 寝太郎が寝てばかりいたのは、力が別次元だったので、村の人に「何もするな」と言われていたから! これは思いもかけませんでした。
しかし、言われてみれば納得です。3000tというと、東京タワー(鉄骨だけで3500t)より少し軽いぐらいで、これが持ち上げられたら、藤原さんが調べた普通の成人男性の力(一時的になら200㎏)の1万5000倍。「動かす」と「持ち上げる」の違いはありますが、とんでもない怪力であることは確かです。普通に行動していたら、何もかも壊してしまうでしょう。
また、「人間の腕力は筋肉の断面積に比例し、1㎠あたり10㎏」という、有用な情報に出会えましたね。ここから、寝太郎の腕の太さを推定してみるのも面白いかもしれません。
ただ1つ、「岩は一立方メートルあたり900〜2700キログラム(この時1000キログラムだとする)である」というのは密度のことですから、その後にある「岩の密度を3g/㎝3(と仮定する)」と同じ内容のことを言っていて、しかも数字が違っていることになります。結論には影響しませんが、ちょっとしたミスでしたね。
しかし! 寝太郎が動かした岩の重さは3000tで、寝てばかりいたのは「何もするな」と言われていたか。見事な科学的推測です。こういう考え方ができる人には、もっといろんなことを考えて、みんなを驚かせていただきたいです。