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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『いばら姫』 100年も昏睡して生きていられるのか?
(ななこ・滋賀県立河瀬高校2年)
疑問
100年昏睡状態にあった人々は生存可能なのか。

昔話紹介

王女が生まれて祝いの会が開かれたが、呼ばれなかった年老いた妖精が怒って「王女は糸車に刺さって死ぬ」という呪いをかけた。だが7人目の妖精が「王女は糸車に刺さっても眠るだけで、100年後に王子が来て目覚めさせてくれる」と言った。15歳になった王女が糸車に刺さって眠りにつき、城中の者たちも皆眠りについてしまった。100年後、王子が現れ、王女と城中の者たちを目覚めさせ、王女と王子は結婚した。

材料と検証

まず気になるのは、100年間昏睡状態にあった人が現実にいるのか、ということだ。当然おらず、調べて出てくる限りでは、昏睡から回復した人の最長昏睡期間は27年、昏睡ののち死亡した人で42年でした。そして、人間は食べ物も水も摂取しなかった場合、4~5日で死亡するという話は有名です。

食事に加えて、城の人々は寝たきりであったため、床ずれ防止、清拭(せいしき)や洗髪、排泄等のケアも必要となります。上で紹介した2人の昏睡の記録は、そうしたケアありきのものです。そう考えると、人々の100年間ののちの回復は、介護者がいないと成り立たないことになります。

そうして回復したとしても、目を覚ましたとき王女は115歳という高齢です。ただし、それを上回る人はたくさんいます。世界最高齢は122歳(諸説あり)とされているため、王女の生存は不可能ではないのかもしれません。

結論と、それにより物語はどう変わる?

100年間昏睡していた状態で生存していたとなると、世界最長記録になります。寝たきりの状態で生存していたとなると、介護者によるケアが必要になります。城中の人が眠りにつき、いばらにおおわれた城の中に眠らされなかった人間がおり、その人が王女や城中の人々の介護をしていたと考えられます。

王女と共に、城中の多くの人が眠りにつきましたが、眠らなかった者もいました。城がいばらにおおわれ、外に出ることもできない中、眠らなかった者は、寝たきりになってしまった人々の介護を100年の間続けました。そして、王子が現れ、人々は目を覚ましました。その後王子と115歳の王女は結婚し、幸せに暮らしましたとさ。

柳田理科雄のコメント

「100年間眠る」ということを、現実問題として真正面から考えたのですね。確かに、介護する人が必要でしょう!

それだけで済ませず、長く昏睡した人たちの実例を調べたのがよかったですね。おかげで、目覚めた人で最長27年、目覚められなかった人で42年という、オドロキの事実に出会えました。この報告書を読んだ人たちも、驚いたことでしょう。

一つひとつを丁寧に調べ、考えていて、人柄が目に浮かぶような研究です。それらに対して、「自分がどう思ったか」を書くと、もっとよかったかもしれません。事実は一つですが、「どう思ったか」は、思った人の数だけありますから、それを記録したり、他の人に話したりすると、次の何かにつながります。

王子が結婚した王女は、115歳だった! という発見も面白いですね。2人とお城の人々、そしてみんなの介護を100年も続けてくれた人たちには、幸せに暮らしてほしいものです。