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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『3匹の子ブタ』 オオカミのお腹の中で子ブタは消化されなかったのか?
(大泉 優月・埼玉県立大宮商業高校定時制3年)
疑問
『3匹の子ブタ』では、オオカミが子ブタ3兄弟のうち先に2匹を食べてしまったが、数日オオカミのお腹にいた2匹は、時間が経って消化されているのではないか。

昔話紹介

おばあさんと暮らしていた子ブタ兄弟たちは、ある時おばあさんに「食べ物がないから、今いる家をでて幸せをさがしてね」と言われ、1匹ずつ自立した生活をはじめようとしていた。だがオオカミがやってきて藁(わら)の家に住んでいる子ブタと、木の板でできた家に住んでいる子ブタを食べてしまった。最後に残った3匹目の子ブタが、2匹の子ブタを最終的に助け出すのだが……。

材料と検証

京都市青少年科学センターのホームページには「オオカミの腸の長さは6m」とある。オオカミの消化時間が載っていないので大まかな予想を立てると、オオカミの遺伝子は犬と似ており、先祖だともいわれている。そこで犬の消化時間をもとにオオカミが子ブタを消化するまでの時間を考えてみた。

犬の胃でかかる消化時間は2時間。長さ3.5mの腸では遅くとも24時間で栄養として吸収されてしまう。ここから考えると、肉食動物であるオオカミは、雑食である犬より消化時間は短いので、子ブタを消化する時間は、犬が消化にかかる時間とほぼ変わらないのではないだろうか。

結論と、それにより物語はどう変わる?

検証の結果、最後の子ブタをオオカミが食べてやろうと試行錯誤しているうちに、2匹の子ブタが食べられてから何日か経ってしまっているので、オオカミの胃は2匹の子ブタを消化しているに違いない。

すると、『3匹の子ブタ』の物語はこうなる。

残った1匹の子ブタを食べようとレンガの家の煙突に入ったオオカミですが、頭のいい子ブタの罠に引っ掛かり、熱湯が入った鍋に落ちてしまいます。

子ブタは頭がいいので、もう兄弟たちが消化されてオオカミの栄養になっていることを分かっていました。おばあさんの家の食料を食べつくしてしまうほどの食欲がある子ブタは、オオカミをそのまま煮込んで食べてしまいました。完。

[参考文献]

京都市青少年科学センター

http://www.edu.city.kyoto.jp/science/online/story/24/index.html

わんちゃんホンポ

柳田理科雄のコメント

昔話にはいろいろなバージョンがありますが、これは先に2匹の子ブタを食べたオオカミが、何日か経ってから3匹目を襲うというお話ですね。

これを読んで、「消化されなかったのか」と疑問を抱いたわけで、言われてみればその通り! 『3匹の子ブタ』はイギリスの民話ですが、イギリスの人たちは不思議に思わなかったのかなあ?

その疑問から出発して、よく調べています。資料の出典をしっかり書いているのがいいですね。

考察も丁寧です。腸の長さはオオカミが6m、犬が3.5m。僕ならここで、「オオカミの腸は、犬の腸の1.7倍だから、消火にかかる時間も1.7倍」と進んでしまうところですが、優月さんは「オオカミは肉食で、犬は雑食だから、消化時間は同じぐらいになるのではないか」と考えています。数字だけに頼るのではなく、生態の違いも考慮していて、納得度が高いです。

また、楽しい研究をしてください!