昔話紹介
おじいさんが山で光っている竹を見つけ、切ってみると中から小さな女の子が出てきた。その子を夫婦がかぐや姫と名付け、育てた。ある日、かぐや姫は「自分は月の国の者」と言い、月へ帰って行った。
材料と検証
竹筒の形状と人体のエネルギー代謝に関するデータをもとに、かぐや姫が竹筒の中で安全に過ごせた生存可能時間を算出してみた。かぐや姫の生理機能を現実の人間の生理機能と同等だと仮定したうえで、竹筒内部の酸素が消費されるスピードを計算した。
結果、かぐや姫が竹のなかで生き延びられる時間はわずか「10分未満」だとわかった。しかし、かぐや姫は 3か月で立派な女性(約15歳でかぐや姫の奈良時代だと成人)になっており、現実の人間と大きく異なる成長をしている。現実の人間と異なる生理機能から10分を超えても竹の中で生きられる可能性がある。
しかし、かぐや姫は人間の60倍の速度で成長しており、約一週間で1歳となり、身長は平均で75㎝となる。竹の直径が20㎝と考えると1歳の段階で竹の中にいることは不可能。酸欠には耐えられても、竹の中で押しつぶされて亡くなってしまうかもしれない。
結論と、それにより物語はどう変わる?
検証の結果、かぐや姫の現実の人間とは異なる生理機能から、酸欠には耐えられたかもしれない。しかし、もし、おじいさんがかぐや姫を見つけるのが遅かったら、竹の中で押しつぶされて亡くなり、竹は光らなかったかもしれない。
すると、『かぐや姫』の物語はこうなる。
おじいさんはそもそも光る竹を見つけないので、この物語は始まらない。
柳田理科雄のコメント
かぐや姫は、竹のなかで息ができたのか? 1000年以上も前に書かれた日本最古の物語なので、もしかしたら、平安時代や江戸時代に、同じ疑問を抱いた人がいたかもしれません。でも、それを自分なりに研究して、「生存可能時間は10分未満」というパワフルな結論を出したのは、謙芯さんが初めてではないかなあ! 昔話について考えるのは、こういう楽しさがあります。
それに留まらず、成長の速さから現実の人間とは異なる生理機能を持っていると考え、酸欠には耐えられる可能性があるが、その生理機能ゆえに、竹のなかで押しつぶされてしまったかもしれない! 論が目くるめくように展開して、まるでジェットコースターに乗っているみたいに楽しいです。
そして結論は、「この物語は始まらない」。わはははは!
『かぐや姫』の物語が1000年以上も語り継がれ、読み継がれて来たのは、おじいさんがジャストなタイミングで光る竹を発見したおかげかもしれません。