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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『きんたろう』 人間は熊を持ち上げられるか?
(高木 凌久・埼玉県立大宮商業高校定時制3年)
疑問
昔話『きんたろう』では、人間の男の子であるきんたろうは熊との相撲で、熊を持ち上げ勝っていた。果たして本当に人間が熊を持ち上げるなんてことができるのだろうか。

昔話紹介

きんたろうは生まれたときから力持ちで、いつも山の中で動物たちと遊んでいた。ある日、熊と相撲をすることになり、きんたろうは熊を持ち上げ勝った。

材料と検証

昔話の中できんたろうは男の子であることと、とても力持ちであることしか明かされておらず、体重や身長がどのくらいなのかが分からない。なので、今回はきんたろうを日本の成人男性だとして考えてみる。日本人男性の20代の平均身長は171.5㎝、平均体重は67.6㎏。

日本にはツキノワグマ、ヒグマが生息していて、ヒグマのほうがツキノワグマよりも大型になる。今回はより大きなヒグマをきんたろうの対戦相手としよう。ヒグマの体長は約2m前後、体重は約150~400㎏。

身長171㎝、体重67㎏のきんたろうに対して、相手であるヒグマは体長2m、体重は最大で約400㎏。普通に考えたら、きんたろうに勝ち目があるとは思えない。しかし、実は、医学の観点から考えると、日本の成人男性には500㎏程の重さを持ち上げることが出来ると言われている。実際に現在のベンチプレスの世界記録は、2020年6月にアメリカのウィル・バロッティ選手が更新した501㎏で、この記録が、人間の持ち上げる限界なのではないだろうか。そう考えると、とても力持ちであった金太郎なら、ヒグマを持ち上げられそう。

結論と、それにより物語はどう変わる?

検証の結果、人間であるきんたろうでも、熊を持ち上げることができる。

むしろ、熊だけではなく、体重500㎏以下の動物が相手なら負けることはないだろう。

きんたろうは筋肉を鍛え続け、相撲無敗の男になりました。

【参考文献】

厚生労働省「国民健康・栄養調査」

環境省自然環境局「クマ類の生態」

趣味トレ「フルギアベンチプレス世界記録更新」

柳田理科雄のコメント

「きんたろうを日本の成人男性だとして考えてみる」という部分に、初めは違和感を覚えました。でも、全体をよく読んでみると、「きんたろうが熊を持ち上げた」という事件を、「人間が熊を持ち上げられるのか」と、大きく捉え直しているわけですね。おかげで、きんたろうの体格にとらわれず、「医学の観点」や「ベンチプレスの世界記録」へと興味の範囲が広がって、「人間は熊を持ち上げられる」という驚きの結論にたどり着きました。

私たちはものを考えるとき、「できるだけ正確に」とか「与えられた条件に合うように」と心がけます。もちろん、それが実りにつながることもありますが、凌久さんの研究を読んで、「問題を大きく捉え直すと、思考がダイナミックになる」こともわかりました。勉強になりました。ありがとう!