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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『3匹の子豚』 子豚は本当に豚か?
(にこ・大手前丸亀中学校1年)
疑問
三匹の子豚のオオカミを食べた豚って本当に豚?

昔話紹介

2匹の豚を食べたオオカミを、生き残った豚が大きな鍋に入れて食べた。

材料と検証

まず、豚は狼を食べるのかということについて、豚は雑食性だからオオカミも食べるには食べるらしい。それを踏まえて読んでくれたら嬉しい。

まず2匹を食べることができる狼はどのくらい強いのかということを調べた。みんな大好き「ラジオ空想科学研究所」で、木の家を吹き飛ばすに必要な肺活量を計算していた。家の底面が一辺2mの正方形、高さが2m、屋根の角度が 45度、木材が厚さ1㎝の杉の板でできていると仮定すると、重さは63㎏になり、それをひっくり返す風を起こすには、1億1600万ccもの肺活量が必要になるそうだ。成人男性の肺活量の基準値は3500ccと言われているから、だいたい成人男性3万3000人分の肺活量になる。そんな恐ろしい肺活量を持つ狼なら、豚2匹分も入る大きな胃袋をもっているかもしれない。そんな最強といっても過言ではない狼を食べた豚は本当に豚だったのか。

まず子豚の種類について調べた。三匹の子豚の話の舞台はイギリスであり、この話の豚は薄いピンク色で二足歩行である。「豚辞典」というサイトによると、大ヨークシャー種は足腰が強いと書かれており、また、画像を見ると絵本の色と瓜二つだったので、豚の種類は大ヨークシャー種である。狼はというと、イギリスにいる狼で有名なのがヨーロッパ狼であるので、ここは無難にヨーロッパ狼だと考えた。

前フリが長くなってしまったが、この生き残った豚のどこがすごいかについて考えていこうと思う。普通の豚でも人間でいうと3歳ぐらいの知能があるというが、人間の3歳位の子どもはこんな最強狼でも壊せないような丈夫なレンガの家を作ることはできないだろう。13歳である私でもできる気がしない。それを一人で作ってのけたのだからこの豚の頭のよさはとびぬけている。そして何より狼を食べたことである。豚は雑食性だからオオカミも食べるには食べるらしいが、ひとりで自分より体のでかい狼を、しかも2匹の子豚を食べた狼を食べることができた子豚はもう豚ではないだろう。

「豚トレ」(一般社団法人日本養豚協会が提供する豚肉の生産情報サイト)によれば、 豚の胃袋の容量は5.7ℓであり、人間の約3倍の容量である。ヨーロッパ狼の体重は30〜80㎏、大ヨークシャー種の豚の体重はオスが370〜500kg以上であり、メスで約340kgである。1ℓあたり1㎏食すことができると仮定すると、ヨーロッパ狼と2匹の豚を食べた豚の胃は、最大1080ℓの容量が必要となる。普通の豚の胃袋ではキャパオーバーである。 この生き残った豚は、普通の豚とは格が違うのである。 さらにいうなら、自分の兄弟が食べられてるのにその食べた相手を食べるなんて、とてつもないメンタルだ。

結論と、それにより物語はどう変わる?

生き残った豚は頭のキレ、胃袋の大きさ、メンタルからも、ただの豚とは格が違うことがわかる。

生き残ったその豚は伝説として恐れられることとなった。もちろんオオカミも近よることができず、3匹で仲良く暮らしましたとさ。

柳田理科雄のコメント

読み物として、ヒジョーに面白い! 最後に、食べられたはずの2匹の子豚が生き返っているようですが、ハッピーエンドなので、いいと思います。

科学的検証としても、豚の胃の容量など、よく調べていますね。狼や豚の体格も推定すると、もっと面白くなったかもしれません。

ただ「ラジオで誰かが言っていたこと」を根拠にするのはどうか……と思いましたが、これだけ数字が詳しいということは、録音したか、何度も聞けるシステムを利用したのでしょうね。だったら、放送日時を添えれば、ラジオやテレビを根拠にするのもありだと思います。

何より素敵なのは、にこさんが楽しみながら研究しているのが伝わってくることです。こんな研究報告書を待っていました。