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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『三びきのこぶた』木の家を吹き飛ばしたオオカミの肺活量を計算する!
(宮尾 悠生・滋賀県立河瀬高校2年)
疑問
木の家を吹き飛ばしたオオカミの肺活量とは?

昔話紹介

簡易的なわらの家、木の家を造った2匹の子ぶたは、オオカミに家を吹き飛ばされてしまい、食べられてしまうが、もう一匹の子ぶたは時間をかけて頑丈なレンガの家を造ったので助かった。

材料と検証

子ぶたが作った木の家を簡単木造と考えると、完全に倒壊し飛散するのは風速50m/s前後である。また、オオカミが人間と同じ肺の構造を持っているとしたら、人間で言う20歳で平均肺活量は4289㏄、瞬間的な風速は10m/s。

よって、4289㏄:10m/s=x㏄:50m/sで、x=21,445㏄。しかし、これは瞬間的に風速50m/sを出すための肺活量なので、持続的に息を出していたオオカミの肺活量は、もっと多いと考えられる。

また、肺活量は身長、体重、体表面積に比例することがわかった。オオカミの平均体長は1.0~1.6m、体重は25~50㎏。体長3m、体重100㎏近いオオカミが現れ、家を破壊した。

結論と、それにより物語はどう変わる?

簡単なわらの家、木の家を造った2匹の子ぶたは、巨大なオオカミの一息によって家が吹き飛ばされてしまい、食べられてしまった。しかし、もう一匹の子ぶたは、時間をかけて頑丈なレンガの家を造ったので吹き飛ばされず、幸せにすごしました。

柳田理科雄のコメント

「木造住宅を吹き飛ばす風速」と「人間の肺活量と吐く息の速度」を調べ、両者を組み合わせて、見事にオオカミの肺活量にたどり着きました。しかも、それで終わりにせず、途中で出会った「肺活量と体格の関係」のデータから、オオカミの体の大きさまで出したのがいいですね。情報の使い方が上手で、思考がダイナミックです!

この研究を読んで「オオカミの体格の計算が違うのでは?」と思った人もいるかもしれません。情報源にある「比例」という言葉は、その内容から考えて、「片方が●倍になったら、もう片方も●倍になる」という数学的な意味ではなく、「片方が大きくなったらもう片方も大きくなる」という意味でしょう。宮尾さんは、それをくみ取って、「だいたいこんな大きさ」と考えたのだと思います。これも、科学に必要な「数量感覚」の1つです。

物語は変わりませんでしたが、体長3m、体重100㎏というオオカミが現れたら、確かに子ブタたちは、まったく太刀打ちできないでしょう。リアルな結末だと思います。

惜しいのは、情報源が不明確なこと。「○○によれば」という形で情報源をはっきり示せば、説得力が増すうえに、他の人も自分の研究に役立てられます。科学はみんなでやっていくものですから、次の機会からぜひよろしくお願いします。