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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『鶴の恩返し』 鳥や動物が恩返しに来る物語は他にもあるのでは?
(島田 弘樹・埼玉県立大宮商業高校定時制普通科)
疑問
『鶴の恩返し』は、罠にかかった一羽の鶴を助けることから始まります。罠が一つとは限らないので、その数だけ上記のような物語が存在するかと思います。

昔話紹介

助けた鶴が、姿かたちを変えて大自然を舞台に恩人へ恩返しをする過程を、どことなくファンタジー要素を取り入れて表現した作品です。

材料と検証

環境省の「狩猟制度の概要」によれば、鳥獣保護管理法第2条第8項において、狩猟は「法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をすること」と定義されており、狩猟鳥獣以外の鳥獣の狩猟は禁じられています。

日本に生息する鳥獣約700種のうちから、農林水産業等への害性及び狩猟対象とすることによる鳥獣の生息状況への影響を考慮し、鳥獣保護管理法施行規則により、鳥類26種類と獣類20種類、合計46種類が狩猟鳥獣に登録されている。鶴はこの対象ではない。つまり、鶴が罠にかかったら、逃がす必要がある。

また狩猟期間が定められており、原則として毎年10月15日(北海道では毎年9月15日)から翌年3月15日(北海道では翌年2月末日)までとされている。物語は冬であり、この期間内である。

『鶴の恩返し』の鶴のように、46種類の狩猟対象から外れる鳥獣は654種類が存在するため、物語を654通りほど他に作ることができる。鶴以外の恩返しをいろいろ想像するのも面白いかもしれません。

結論と、それにより物語はどう変わる?

狩猟免許を持っていた「おじいさん」は、罠の回収をしていると、一羽の鶴が罠にかかっていました。鶴は狩猟鳥獣から外れているため、はじめはがっかりしていた「おじいさん」でしたが、根は優しかったので鶴を罠から外し自然に返してあげました。

その後、相変わらず狩猟が下手な「おじいさん」でしたが、プロとしての誇りを胸に鶴の絵の入ったお札を片手に道具を揃え、貧しいながらも必死に生きていきました。

柳田理科雄のコメント

日本にはたくさんの鳥や動物がいるのだから、『鶴の恩返し』のような話は他にもあってよいのではないか。こんな発想をする人に、生まれて初めて出会いました。

「現在の法律で考えると、どうなるか」という視点も斬新ですね。これを足掛かりに徹底して調べたおかげで、「恩返しに来る可能性のある鳥獣は654種」というパワフルな結論が得られました。素晴らしいです!

「狩猟制度の概要」を調べると、狩猟鳥獣は次の通り。鳥類が、カワウ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾライチョウ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く)、キジ、コジュケイ、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズメ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス。獣類が、タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン(ツシマテンを除く)、イタチ(雄)、シベリアイタチ、ミンク、アナグマ、アライグマ、ヒグマ、ツキノワグマ、ハクビシン、イノシシ、ニホンジカ、タイワンリス、シマリス、ヌートリア、ユキウサギ、ノウサギ。

ウグイスやニホンザルは、どんな恩返しをしてくれるのでしょう。想像すると、本当に楽しいです。