昔話紹介
あるところに美人で働き者の奥さんがいた。嫁いでから段々と顔色が悪くなっていったので、旦那さんが理由を尋ねると「屁をこく癖があり、我慢していたら具合が悪くなってしまった」という。「屁をこいても構わない」というと、嫁は旦那さんを家の大黒柱にくくりつけて屁をこいた。すると旦那さんは柱ごと飛んで行ってしまった。奥さんが旦那さんを探していると、お金のなった木を見つけ、手を触れずに落としたら自分のものになると聞き、屁の勢いでお金を落とすと、空から旦那さんも落ちてきた。二人はいつまでも仲良く暮らしましたとさ。
材料と検証
おならが出る仕組みを調べてみた。『くさい! だれでもなんでも、においパワーがばくはつだ!』(河出書房新社)には、おならは食事のときに吸い込んだ空気から作られていて、バクテリアが腸の中で食べ物の消化を助けるときにも出る、と書かれている。
おならの成分とその割合についても調べてみた。『グロッソロジー きたないもの学~からだのふしぎ~』(講談社)には、おならは炭酸ガス、水素、メタンからできていて、残りは匂いの原因となるガスでできていると記載してあった。
そして、重要である速度についても調べてみた。サイト「HEALTH PRESS」には、成人なら一日にする数回のおならを合わせると、時速12キロ(約3時間半でフルマラソンを走るスピード)もの速度になると記載してあった。へっぴりよめごは、これを我慢して一回で出していると考えられる。このくらいの速度で家は倒れるのだろうか?
2019年の台風19号の最大瞬間風速は、weathernews.comによると57.5m/s(秒速)だったらしい。この台風では大きな塔が倒れるなどの被害が出た。私は当時の家の強度は、さほど無いと考えた。昔の有名な台風で、安政江戸台風という台風がある。サイト「江戸ガイド」には安政江戸台風では家が崩壊したとの記載があったため、おそらくこの台風くらいの風速があれば『へっぴりよめご』の家も倒せると考えられる。「気象庁」のデータには風速40m/s以上で住宅が倒壊すると記載があるため、この速さの風は自然界でも起こり得る風速速度だとわかる。
では、この速度は人に出せるのだろうか?人のおならの速度が時速12キロだというから、風速60m/s(時速216km)は人には出せないと私は考えた。よって、家が吹き飛ぶのではなく、奥さんのおならによって、この夫婦が貧乏でなくなる別のことが起きたのではないかと私は考えた。
結論と、それにより物語はどう変わる?
旦那さんに本当のことを言って、安心した奥さんがおならをしたその瞬間…。奥さんのおならのあまりの大きさに一瞬家が吹き飛ぶかと旦那さんは思った。しかし、家は吹き飛ばず、代わりに、夫婦の家から金目の物を盗もうと隠れていた泥棒におならが直撃! あまりの勢いに、泥棒は気絶してしまった。悪い泥棒を見事に捕まえた奥さんは町のヒーローに!これを知った殿様から褒美として大金をもらうことができたのだった。めでたしめでたし。
柳田理科雄のコメント
1.これは大胆な展開ですね!家を吹き飛ばすおならの力を知りたい
2.おならの速度を調べ、台風の風速を調べ、人間には無理とわかった
3.貧乏でなくなる別の事件が起きたのではないか
4.おならで泥棒を捕まえ、町のヒーローになり、殿様に褒美をもらった
見事な起承転結! 僕は大好きです。
2019年の台風19号や、江戸安政台風について調べた熱意もすごいと思います。
ただ「一日にする数回のおならを合わせると、時速12キロ」という部分の意味がよくわからないので、引用元の『HEALTH PRESS』を読んでみると、これは単に「おならの速度」のようですね。貴重な情報を教えてもらいました。
科学の世界でも、研究が行き詰まって、「何か別の道はないか?」と考え、偉大な発見につながった例はたくさんあります。有名なのは、天動説から地動説への転換(調べてみよう)ですね。そこまで大げさでなくても、「別の方法はないか」と考えるのは、1つの道をどこまでも突き進むのと同じぐらい実り豊かです。これからも、楽しく自由に考えてください。