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空想科学ゼミ SEMINAR

疑問を抱き、材料を集め、自ら考える

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研究報告
『ヘンゼルとグレーテル』 二人を背中に乗せたカモは 大きすぎない!?
(生頼 瑞希・トキワ松学園中学校1年)
疑問
『ヘンゼルとグレーテル』では、ヘンゼルとグレーテルが、家の近くの大きい川を渡るためにカモの背中に乗った。カモ、大きすぎる!?

昔話紹介

家から出されてお菓子の家を見つけた二人だったが、そこに住む魔女に捕まった。最終的にヘンゼルとグレーテルは、お菓子の家から抜け出すことに成功した。だが、大きい川が家の近くにあった。橋がないため、二人はカモに一人ずつ乗って川を乗り越えた。

材料と検証

カモの特徴について紹介しているサイト「カモの種類と魅力」には、カモの大きさについて「一般的なカモの定義は小型のカモ科の鳥たち」とある。ハクチョウもカモ科だが、大型なのでこれには含まれない。もしかしたらこの話に出てくるカモは相当力があった可能性がある。

ヘンゼルとグレーテルの体重をまず調べてみた。年齢を6歳0ヵ月で仮定してみた。子供の「年齢別平均体重」というサイトで見ると、ヘンゼル20.3㎏、グレーテル19.6㎏だった。ただ二人は比較的痩せていると私はみた。2㎏減らすと、カモは約18㎏分の重さの子供を背負っていたということになる。

カモが背負える重さを調べてみた。カイツブリというカモは、最大3匹の雛を背負えた。カイツブリの雛の体重は、「野原から」のサイトによると、47g。一匹の親カイツブリにつき、子は三匹で141g。人間と比べると、子供の体重は約13倍!しかし「鳥キチ日記」には最大1.5㎏のカイツブリがいたという記録があった。その大きさの鳥だったらもう一匹くらいは雛を乗せられたかもしれない。それでも人間の子供の体重は約9倍。人間の子供、重い、重すぎる。だから、きっとこの話のカモは、9倍の大きさだったのだろう。普通のカイツブリの体長は26㎝、9倍で234㎝!

結論と、それにより物語はどう変わる?

魔女の元から家に帰る途中、行く手を川に阻まれたヘンゼルとグレーテル。しかしその川で、二人はうまいことに、2.34mの体長の巨大カイツブリを見つけ、その上を渡り、無事、お父さんの元へ行けました。完。

柳田理科雄のコメント

人間の子どもを乗せたカモは、とてつもなく大きかったのでは? 

この発想が、とてつもなくオモシロイ!「言われてみれば、そうだよね」と笑える話は、とても楽しいものですが、生頼さんの研究は、その代表だと思います。

ただ、直したほうがいいのではないかと思える点が3つあります。

1.子どもの体重18㎏は、カイツブリのひな3羽の体重141gの「13倍」ではなくて、「130倍」です。

2.途中では「大型のカイツブリなら、ヒナ4羽を載せられるかもしれない」と考えながら、最後のほうでは、普通のカイツブリの体長で計算しています。比較の対象にするカイツブリは、同じにしたほうがよかったですね。

3.カイツブリが背中に乗せられる重さは、体長ではなく、体重に比例すると考えるのがいいでしょう。密度が同じなら、体積に比例することになります。そして、中3で習いますが、相似な(形が同じで大きさが違う)立体図形では、体積は長さの3乗に比例します。逆に「体積の倍率」から、「長さの倍率」を求めることは、高2にならないと習わないのですが、関数電卓があれは計算できます。「体積の倍率」「x」「1÷3」「=」と入力すると、答えが出ます。

なんだか、たくさんの間違いをしてしまったように見えますが、そんなことはありません。①と②は誰でもやることで、注意すれば次から解決できます。③は、生頼さんは中1なのですから、知らないのが当たり前。「新しいことを学べてラッキー」と思ってください。

昔話の謎を考えるという楽しい遊びでは、「正しい答えを出す」ことよりも、「疑問を抱くこと、解決するための情報を探すこと、自分の頭で考えること」のほうが、ずっと大切です。それは見事にできていました!