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『恐怖新聞』は、一回読むと寿命が100日縮まる新聞! すると、死ぬのはいつ!?

あんぎゃ~、『恐怖新聞』。何が怖いといって、筆者はこのマンガほど怖いマンガを知りません!

この作品の作者はつのだじろう先生で、連載されていたのは1970年代の週刊少年チャンピオン。当時、この雑誌には人気作が目白押しで、大ブームになった『がきデカ』や、不朽の名作『ブラックジャック』や、野球マンガの金字塔『ドカベン』などが同時に載っていた。いや~、すごく豪華な布陣だったのだなあ、少年チャンピオン。値段はいくらだったかなあ。130円くらいだったかなあ。学校の近くの海江田書店で買ったなあ。

などと、周辺情報ばかり語って、なかなか本題に入ろうとしないのは、はい、やっぱり『恐怖新聞』が怖いからですね。できればこのまま、少年チャンピオンの話を続けたい。

が、許してもらえそうもないので、覚悟を決めて『恐怖新聞』の話をするならば、その主人公は鬼形礼くん(中2)。毎晩12時になると、彼の部屋に、頼んでもいない新聞が届けられる……。

◆死んでしまうのはいつか?

夜中に届く恐怖新聞。そこに書かれているのは、翌日起こる事件や事故や怪現象である!

たとえば、鬼形くんの担任の先生が交通事故に遭って、鬼形くんは事故の目撃者になる、など。そして翌日、そのとおりのことが起こってしまう……。ひ~っ、こうして紹介しているだけで、もう漏らしそうだ~っ。

それだけではない。なんとこの「恐怖新聞」は、一回読むと寿命が100日縮まるという!

いろいろコワい恐怖新聞だが、いちばんドキドキしたのは、この「一回読むと、寿命が100日縮む」という設定であった。たった一回で100日。夏休みだって30~40日なのに、その3倍とか4倍もの寿命が縮んでしまうのだ。そんな新聞、絶対読みたくない!

当然、鬼形礼くんも読まない工夫を試みるのだが、どうやっても新聞は届けられてしまい、なぜか目が吸い寄せられて、嫌でも新聞を読んでしまうのだった。今日も、明日も……。

そうなると鬼形くんの命は、いつ尽きてしまうのか? 怖いケド、ここで計算してみよう。

中学2年生の彼の余命があと70年だとすれば、それは2万5550日。一日読むごとに寿命が100日減っていくなら、255日と半分読めば、寿命は完全に尽きることになる。恐怖新聞は日刊だから、つまり残された寿命は、あと256日。ぎょぎょっ、1年もない!

たとえば今日が5月1日だとしたら、夏を過ぎ、冬を迎えて、年明けの1月11日が256日目! わわわ~、来年の桜は見れません~。やっぱり怖い~。

◆雨戸を突き破って、新聞が届く!

この恐ろしい新聞は、どうやって届けられるのか? マンガのなかの説明によると、どうやら霊が配達するらしいのだが、霊だからその姿は見えない。

最初の晩は、夜中の12時にパタパタパタと人の走る足音に続いて「しんぶ~ん」という声と「バサッ」と何かが置かれていった音が聞こえる。眠れないでいた鬼形くんが「いまは…夜中の十二時…朝刊がとどくはずもない…」と不思議に思って窓を開けると、ふわ~っと風に舞うように新聞が入ってきた! むえ~っ、これも怖い。

こうして恐怖新聞が届くようになった鬼形くんは、もちろん対策を講じる。翌日は固く雨戸を閉ざし、ガラス戸に鍵をかけ、カーテンを閉めて、布団に入った。これなら、新聞の受け取りを拒絶できると考えたのだ。うむ、それは科学的に正しい姿勢だぞ、鬼形くん。

ところが、またしてもパタパタと足音が近づいてきたと思いきや、グワシャン!と雨戸とガラス窓を突き破り、恐怖新聞が飛び込んできたのだ!

どっひ~っ、どうして!? 新聞が雨戸とガラス窓を壊して入ってくる、なんてことがあるのか? いくら恐怖新聞とはいえ、素材は紙だと思われるが……。

この問題は冷静に考えて、科学的にシロクロをつけなければ。心霊現象も、科学的に説明がつけば、怖くもなんともなくなるはずである。

◆新聞のスピードは時速880㎞!?

かつて(昭和の頃とか)雨戸は薄い木の板でできているものが多かった。ここでは、鬼形くんの部屋の雨戸が、厚さ5㎜、幅15㎝の杉板でできていて、30㎝間隔の角材に打ち付けられていたと仮定しよう。

これを突き破るための力を計算すると、28㎏。新聞がこれを上回る力を発揮できれば、雨戸を破れるはずだ。そして雨戸さえ破れれば、ガラス窓を割るのは簡単だろう。

一方、新聞紙も筒状に丸めれば、かなりの強度になる。そこで、10枚1組の新聞を折って、筒状に丸めて体重計に押しつけてみたところ……、おおっ、グシャッと曲がったのは45㎏のとき。やった、雨戸を破る28㎏を超えた。つまり新聞で雨戸を突き破ることは、不可能ではないということだ!

ただし、新聞は軽い。手元の新聞を量ると200gしかない。これほど軽いもので雨戸を突き破るには、よほどのスピードで投げる必要がある。計算してみると、なんと時速880㎞!

つまり、この怪奇現象を科学的に説明すると「筒状に丸めた新聞紙を、新聞配達人(霊)が時速880㎞で投げつければ、雨戸とガラスを壊して、新聞は室内に届く」となる。さあ、こうして科学的な説明がついたから、もうこの現象も怖くない……などといえるのか!? 霊が新聞を時速880㎞で投げる!? なんだか、ますます奇怪な現象になっただけのような気がする……。

しかも、いまもう一度『恐怖新聞』を読み直してみたら、雨戸を突き破った新聞は丸められてなどいない。折りたたまれたままのカタチで、雨戸とガラスを壊し、カーテンをはねのけて、室内に飛び込んでいている。どっしぇ~っ、いったいどういうこと!?

恐怖新聞はやはり恐ろしい。初めて読んでから半世紀くらい経つのに、恐ろしさはまったく薄れない。なんとすごいマンガなのか。【了