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なんとスバラシイ武器だろう。『マジンガーZ』のおっぱいミサイルを絶賛!

電子レンジを使うことを、何でもかんでも「チンする」と言ってる人はいませんか? いけませんぞ、われわれ科学の子は「加熱する」「解凍する」など正しく使い分けましょう。

などとエラソーに言ってる筆者だが、長い人生のなかでは正式名称を用いず、イメージそのまんまの言葉を使っていたこともある。それこそは「おっぱいミサイル」!

アフロダイAという女性型ロボットの豊満な胸がミサイルになっており、ボイ~ンボイ~ンと飛び出して、敵のロボットをボカ~ンボカ~ンと攻撃する。正式名称は「光子力ミサイル」とか「アフロダイミサイル」とかいうらしいのだが、ええい、そんなまどろっこしい呼び方ができるかいっ。おっぱいがぶっ飛んでいって爆発する。このスバラシイ武器を「おっぱいミサイル」と呼ばずして、何と呼ぶ!? (←だから「光子力ミサイル」と呼びましょう)。

このおっぱいミサイルが登場したのは、1970年代のアニメ『マジンガーZ』である。放送開始のとき小学5年生だった筆者は、毎回テレビの前に正座して見ていた。それはマジンガーZを建造した兜十蔵(かぶとじゅうぞう)博士をモノスゴク尊敬していたから。博士は、孫の甲児(こうじ)にマジンガーZを譲るときこう言った。

「マジンガーZさえあれば、お前は神にも悪魔にもなれる」。

おお~っ。人間と科学の関係を、これほど的確に言い得た言葉があるだろうか!?

このように、科学の学び舎のようなつもりで見ていた『マジンガーZ』で、おっぱいミサイルが炸裂したのだから、もうビックリ&大喜びしたのである。これをぶっ放すアフロダイAの操縦者は、弓さやか。マジンガーZを支援する光子力研究所の所長・弓弦之助(げんのすけ)教授の一人娘である。

◆取りつけたのは誰か?

筆者は昔から、兜十蔵博士を尊敬するあまり、弓教授を過小評価するきらいがあった。以前から「16歳の弓さやかがアフロダイAに搭乗しているのは、さやかが大天才か、弓教授が親バカか、光子力研究所が人材不足のいずれかの理由に違いない」などと、暴言を吐いては顰蹙(ひんしゅく)を買ってきたのだ。

だが、意外に立派な人物だったようで、光子力の悪用を防ぐために、後に政治家に転身。2018年に公開された映画『マジンガーZ infinity』は、テレビ版の10年後を舞台とした続編だが、その物語ではなんと日本の総理大臣になっていた! う~む、あの男がまさかそこまで出世するとは……。

話を戻せば、アフロダイAはもともと、地質調査用のロボットだった。当然、武器など装備していなかったのだが、それがなぜ胸からミサイルをぶっ放すようになったのだろう? 正座して見ていたはずだが、昔すぎて記憶がないので、久しぶりにアニメを鑑賞したところ……。

 マジンガーZが光子力研究所の支援を受けるようになり、アフロダイAも戦場へ出るようになった。ところが、武器を持たないため、マジンガーZの足手まといになるケースも。そこで第4話、ある研究員が弓教授にこんな進言をする。

研究員「アフロダイAもガードぐらいはしなければならないと思うんですが、どうでしょうか」

弓教授「ふ~む」

研究員「実は地質調査用のミサイルを、ある場合はガードに使用できるように装備したんです」

弓教授「仕方がないだろう」

ここで画面が屋外の実験場に切り替わり、アフロダイAがおっぱいミサイルをぶっ放す!

驚くべきことである。この名もない研究員は、地質調査用のミサイルをアフロダイAに独断で装備し、事後承諾を取りつけようとしているのだ。ってことは、女性型ロボットのおっぱいをミサイルにしようと思いついたのもこの男! アフロダイAの専任操縦者は上司の愛娘(まなむすめ)なのに!

だが、さやかは動じなかった。おっぱいミサイルの爆発力を確認すると「お父さま、第一弾のテストには成功しました。でも、こんなことには使わないで、やっぱり地質調査にだけ使ってたほうがいいわね」と、あくまで非常措置であり、本来は平和利用に徹すべきと言ったのだ。「どこにミサイルつけてんのよ!」と拒絶感をあらわにしても不思議はないケースだと思うが、ミサイルの装備部位などまったく問題にしていない。なんとまあ、オトナな女性だったのだなあ。

◆おっぱいがいっぱいだー!

 このおっぱいミサイル、威力はどれほどだろうか。

アフロダイAは身長16m、体重18t。ちょうど人間の女性の10倍ほどの身長だ。その胸から発射されるおっぱいミサイルは、前方がまぁるい半球になっている。『スーパーロボット大鑑』(メディアワークス)などの絵で測定すると、直径は1・2mというところか。

そして、昔から不思議で不思議で仕方がなかったのだが、発射されたミサイルを見ると、長さが直径の5倍ほどもある。すると全長6mということになるが、そんな長大なモノがアフロダイAの胸に装備できるのか!? 人間でいえば、背中から乳頭まで60㎝……ということになってしまい、想像すら及ばない。いや、発射される前は、きちんと収まっているのである。収納時には、おっぱいミサイルの後方は、ジャバラ状に折りたたまれているのだろうか? うーん……。

どう考えても謎が解けないので、ここでは発射前の形状で考えることにしよう。ミサイルは先端が半球で、途中から円筒形と仮定する。アフロダイAの体の前後の厚みは2mほどなので、円筒の長さを1・5mと考えると、このミサイルは直径1・2m、長さ2・1m(半球の半径0・6m+円筒の長さ1・5m)となる。その表面が厚さ1㎝のジュラルミンで覆われており、内部に燃料と爆薬が半々に入っていると考えれば、推定重量は2・2t。左右合わせて4・4tである。なんと体重の4分の1という、すごいおっぱいだ! 

このサイズだと、破壊力もたいへんなものになると思われる。計算すると、着弾地点から半径80m以内の建物が吹き飛ぶ。世界一強力なおっぱいだ!

さらに驚くべきことに、おっぱいミサイルはその後パワーアップする。第60話から、連続発射が可能になったのだ。

確かに左右1発ずつしか撃てなかったら、撃った後の戦力ダウンが心配である。このたびの改良で、撃っても撃っても、あとからあとからおっぱいが出現するようになったのはスバラシイが、1発ずつの時代さえ収納問題で悩ましかったのに、そんなにいっぱいのおっぱい、どこに収納してあるんだろう!? 

前述のとおり、筆者の推定ではミサイル1基が2・2tもある。アフロダイAの体重は18tだから、おっぱい8発をぶっ放した時点で、内部はほぼカラッポ。9発だと、おっぱいが体重を上回るというナゾなことになってしまう。うーむ、この問題、科学では太刀打(たちう)ちできんなあ。

◆おっぱいをつかんで空を飛ぶ!

 これに関しては、もう一つオドロキのできごとがあった。マジンガーZがおっぱいで空を飛んだのだ!

それは第32話。空飛ぶ機械獣・ケルベロスJ3との戦いで、当時は空を飛べなかったマジンガーZは敗北を喫してしまう。しかしボクらの主人公はくじけなかった。小型宇宙ロケットをアフロダイAの胸に装填し、超ボインのおっぱいミサイルとした! 偉いぞ、甲児! 

いや、超ボインにしたのが偉いのではなく(それも偉いけど)、マジンガーZがこれを使って空を飛んだのが偉い! 具体的には、マジンガーZを全力疾走させて、さやかに後方からロケットを発射してもらい、ジャンプして両手でむんずとワシづかみ。それを推進力に空を飛んだのだ。おっぱいをつかんで空を飛ぶとはあまりにも羨ましい……いや、スバラシイ飛行法である。

しかし、これは可能なことなのか。

マジンガーZは身長18m、体重20t。身長180㎝、体重70㎏の人が身長18mに相似拡大したら、体重は千倍の70tになるはずだから、それと比較すると、マジンガーZはかなり軽いことになる。これは飛ぶのに有利だ。またマジンガーZの走る速さは時速360㎞だが、このエピソードにおいてスピードアップが図られ、画面で測定すると時速500㎞になったと思われる。

そして、おっぱいロケットは、全長5m、直径85㎝ほど。H-ⅡBロケットを元に考えると、推定重量530㎏ほどだろうか。これを空中でキャッチすると、スピードは時速1200㎞にアップするはずである。

これらを元に筆者が計算した限り、マジンガーZが空中で次のイラストのような体勢(顔を足より高くして、体を水平から12度傾ける)を取れば、凧と同じ仕組みで20tの揚力が発生する。マジンガーZは18tだから、おおっ、マジンガーZは飛べるということだ! 体重の軽さと、走行速度の速さが可能にした科学の勝利である。

 おっぱいミサイル自体は、現代科学でも解き明かせないナゾを内包しているが、それをワシづかみにして空を飛ぶことは可能。ふむふむ、これはなかなか喜ばしい結論ではないか。【了】