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経済産業省「未来の教室」実証事業に採択されました。

「STEAM空想科学教室」というオンライン授業の企画が、経済産業省「未来の教室」の実証事業に採択された。

これは、ざっくり言うと『空想科学読本』の発想や視点をそのまま授業にするものだ。

僕は『空想科学読本』のいちばんの魅力は、発想や視点の面白さだと思っている。

たとえば、アンパンマン。「あの巨大な顔は、普通のアンパン何個分か」というわかりやすい問題から始まり、「これを投げるのは誰? そう、バタコさん!」と展開して、彼女の投擲力を計算する。そこから「バタコさんが投げた新しい顔が、古い顔を弾いてその場に留まるという、カーリングのような現象が起こっている」と指摘したり、そうかと思えば「あの顔は球体だけど、そんなパンが焼けるの?」とパン作りの話になったりする。

相似や放物線運動や反発係数やイースト菌など、さまざまな理科の材料を使って「気になる疑問」をどんどん検証していく。その姿勢こそが『空想科学読本』の真骨頂で、読者もそこに、理科に対する爽快な面白さを感じてくれているのだと思う。

それを踏まえて「授業」にするのが、このたびの「STEAM空想科学教室」だ。授業のタイトルは『ラプンツェル救出大作戦‼』。

まず「塔の上で暮らすラプンツェルの長い髪をつたって王子が塔に昇り……」というグリム童話を紹介し、参加する子どもたちに「気になった疑問」を挙げてもらうところからスタートする。髪で人が昇れるの? ラプンツェルは痛くないの? 塔の下まで垂らせる髪なんて、伸ばすのに何年かかるの? などなど、さまざまな疑問が出るだろう。

子どもたちは、柳田といっしょに疑問を解く材料を集め、それを使って科学的に考える。そして、ひととおりの疑問を検証した後、もう一度『ラプンツェル』の話を振り返ってみると、それはさっきとは少し違った物語になっており……。

これは、柳田が『空想科学読本』を書くときとのやり方そのままである。

素朴な疑問を解くために、いろいろな材料を集め、さまざま方向から考えて、自分なりの結論を導く。普通に知識を教える授業ではなく、分野や単元を超えた「発想や視点」を重視する授業だ。参加した子どもたちは、大笑いし、自由に意見を言っているうちに「自分で考える」ことの面白さを実感するだろう。

そう、われわれの目標は「理科は意外と面白そう」「考えることは楽しい」と感じてもらうことなのだ。

「STEAM」とは、総合的な知識と思考で問題を解決しようとする姿勢であり、これからの社会や教育に、その視点は欠かせない。『空想科学読本』をベースにした「STEAM空想科学教室」がその役に立てるとしたら、こんなに嬉しいことはないと思っている。