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『仮面ライダー』のウィルス作戦

こんにちは、所長です。

新型コロナウィルスでこれほど世界が一変するとは……と驚く日々が続いている。空想科学の世界にも、ウィルスの恐ろしさを描いた話はいろいろあるのだが、実は『仮面ライダー』にも登場する。しかも2話目に。

『ジュニア空想科学読本』では、2018年12月に刊行した15巻で紹介しており、柳田は冒頭にこう書いている。

「ウィルスが厄介なのは、感染すると体内で増殖し、さまざまな経路で別の人にも感染することだ。感染経路がわからなかったり、正しく対処しなかったりすると、広い地域で大流行するパンデミックが起こってしまう。これがホントにオソロシイ!」。

『ジュニ空』を読んだ子どものなかには、新型コロナが流行し始めたときに、思い出してくれた人もいるかもしれない。

『仮面ライダー』の第2話で、ウィルス作戦を行ったのは蝙蝠男だった。新型コロナなど、多くのウィルスはコウモリが感染源といわれるから、科学的にもナットクである。

だが、劇中のそれは驚くべきウィルスだった。蝙蝠男の噛みつきによって感染すると、口から牙が生え、ショッカーの言うなりになる。そして、他人を見れば噛みついて、感染者を増やしていく……。

これは怖い! 感染者が積極的に噛みついてくるから、マスクやうがいや手洗いを徹底しても感染を防げないのだ。

この調子で、被害者が次の加害者を生み出し続けていくと、どうなるか。

仮に30分に1人ずつ噛んでいくと、1時間後には4人、1.5時間後には8人、2時間後には16人……と倍々で増えていく。その後を記すと……、

3時間後……64人

4時間後……256人

5時間後……1024人

6時間後……4096人

7時間後……1万6384人

8時間後……6万5536人

9時間後……26万2144人

10時間後……104万8576人

11時間後……419万4304人

12時間後……1677万7216人

13時間後……6710万8864人

13時間半後……1億3421万7728人

なんと、13時間とちょっとで、日本人がすべて感染してしまう! いまが午後6時だとしたら、明日の朝には全員がショッカーの配下になる。恐るべきウィルス作戦だ!

だが『仮面ライダー』では、そんなオソロシイことにはならなかった。感染は、一つの団地のなかだけに留まったのだ。

それはなぜかというと、ショッカーがウィルスの効力をなくす血清も開発して、蝙蝠男の爪に仕込んでいたから。蝙蝠男をだまして、それを聞き出した本郷猛は仮面ライダーに変身、蝙蝠男を倒す。そして、蝙蝠男の爪で感染者を次々に引っかいて、人々を救ったのだった……。

新型コロナの治療薬やワクチンの開発にまだ成功していない現状からすると、ショッカーが血清を開発してくれていたのは、まことにうらやましい話である。だが、全体を俯瞰するなら、仮面ライダー最大の功績は「感染が団地内に留まっているうちにスピーディーに対処したこと」だ。毎度思うけど、仮面ライダーは仕事が速い。

子ども向けの番組で、誇張も飛躍もたくさんある『仮面ライダー』だけど、この話ではウィルスの怖さと対処の基本が描かれている。機会があれば、一度見てみて。