1月下旬、自宅の冷蔵庫が壊れた。まったく冷えなくなり、庫内の氷や保冷剤がじわじわ溶けていく。
家電屋さんに行って新しい冷蔵庫を購入したものの、配達は1週間後。
かくて冷蔵庫ナシの生活が始まってしまった。
冷蔵庫のない暮らしの記憶はなくて、だいぶ戸惑った。
「冷凍室」のものは潔く廃棄したが、悩んだのは「冷蔵室」のものたちである。牛乳はどうする、ヨーグルトはどうする、お刺身はどうする、夕飯の残り物はどうする。
だが、やがてベランダに出せばいいと気づいた。
1月の東京の平均気温は5.4℃、最低気温は平均1.2℃。夜の気温はおおむねこの範囲内だろうから、すると平均的な冷蔵庫の温度=2~6℃とほぼ同じなのだ。
実際、牛乳もヨーグルトもお刺身も、夜のベランダに置いておくと、冷蔵庫に入れるよりも冷たいくらいで、たいへんおいしく食べられた。日本酒など、ベランダから取ってくると、むしろ風情があって味わい深い。
問題は昼間だったが、保冷材や保冷バッグを使って直射日光当たらないところに置けば、これもなんとかなった。
とはいえ今年の東京の冬は暖かく、最高気温が12℃を超える日も多かった(過去30年の最高気温の平均は9.8℃)。
なので「今日もできるだけ気温が上がりませんように」と思い、天気予報で「明日は寒い一日になるでしょう」などと言われると大喜びする。
それまでは寒いとそれだけでグッタリしていたから、冷蔵庫がないというだけで正反対のことを思うのが、自分でも面白かった。
そして1週間もそんな暮らしをしているとなんだか慣れてきて、このまま冷蔵庫ナシの暮らしでもいいか……などと思ったりもしたのだが、考えてみればとんでもない。
たとえば4月になると、平均気温は14.3℃、最低気温は9.8℃まで上昇する。
いちばんいいタイミングで冷蔵庫が壊れてくれたのだった。