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「モケイのモリナガ」と『空想科学読本』

「月刊アーマーモデリング」8月号の特集は「モケイのモリナガ」。暑苦しくて濃厚なスゴイ特集である。
プラモデルの世界で、モリナガ・ヨウさんがいかに多くの人々を魅了してきたかが、ひたすら熱く語られ、実例がこれでもかと示されている。

そんな誌面からは浮いているのだが、僕も短文を寄稿して、モリナガさんに『空想科学読本』の表紙のオブジェを作ってもらうことになった経緯などを紹介している。

僕がモリナガさんにお願いした初めての仕事は、柳田理科雄の似顔絵である。
柳田が学習塾を開くことになり、宣伝のチラシを作りたいというので頼んだもので、もう30年以上前のことだ。当時、柳田はどっぷり学習塾の講師だった。

モリナガさんと僕は、このチラシをきっかけに意気投合し、さまざまな仕事をいっしょにやらせていただいた。どんな本でも、何らかの仕事(イラストとかオブジェとかチャートとか4コママンガとか)をモリナガさんに頼んでいた。
「この球を投げたら、どんなふうに投げ返してくるだろう」というのが面白くてたまらなかったのだ。
少し後になるが、『空想歴史読本』に至っては、モリナガさんの才能の幅を見たくて企画したもので、歴史の本のパロディとして、すべてのビジュアルをモリナガさんに担当してもらった。

一方、モリナガさんのチラシで元気に開業した柳田の学習塾は、数年経つと経営が悪化してきた。
柳田が経済的にひどく困窮している様子だったので、僕は『空想科学読本』の企画を立てて、柳田に執筆するよう提案した。
その本の表紙は、迷うことなくモリナガさんにオブジェを依頼し、そこから20年使くシリーズのほとんどにつき合ってもらうことになる。

「アーマーモデリング」には、『空想科学読本』のオブジェを依頼した際、モリナガさんから送られてきた表紙のラフ案も載せてもらったのだが、あまりに小さくてよく見えない。せっかくなので、ここに掲載させていただきたい。

メインのラフは、人物が後ろ向きなのでNG。右上の「実験を見守っている博士と助手」の絵がとても素敵だったので、これを発展させたイメージで『空想科学読本』のオブジェを作ってもらった。

モリナガ・ヨウさんは、精密なイラストルポでも知られる作家で、産経児童出版文化賞を受賞した『築地市場: 絵でみる魚市場の一日』(小峰書店)や『図解絵本東京スカイツリー』(ポプラ社)などの大ヒット絵本もたくさんある。

だが、「モケイのモリナガ」の特集では、そんなそんなことには1㎜も触れられていない。もちろん『空想科学読本』のことなど、まったく出てこない。
モリナガさんの模型の世界はそれほど濃密なのである。
でも一方で、それだと少しもったいないなと思い、雑誌にも寄稿し、ここにも少し紹介させてもらった次第。