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ぜひ読んでほしい『木挽町のあだ討ち』

このコーナーに書く内容じゃないと思うんだけど、どこかで吐き出さないと、そこらへんを歩いている人をつかまえて「『木挽町のあだ討ち』を読みましょう」と話しかけてしまいそうなので、申し訳ないけどここに書かせてください。

永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』がモーレツによいです。
啓文堂書店の「小説大賞」候補作になってたので買ったのだけど(啓文堂は、亡き安倍晶子の『東京藝大 仏さま研究室』をたくさん売ってくれたので感謝している)、この小説、直木賞の候補になってたんですね。ぜひとも獲ってほしい。

書名からもわかるように、江戸時代の仇討ちの話である。
ある雪の日の夕刻、木挽町でいきなり仇討ちが起こった。近くには芝居小屋があって人の往来も多く、若い侍が見事に仇討ちを果たす様子を多くの人が見ていた。

小説の舞台はその二年後。
侍の国元から、その縁者を名乗る者がやってきて、いろいろな人に仇討の様子を聞いていく。
不思議なことに、話してくれた人たちの生い立ちや来し方までも尋ねようとする。
仇討に不審なところはなく、目撃談を語る人たちの過去に共通項があるわけでもない。
侍の縁者は、いったい何を探ろうとしているのだろう?

小説の前半は、それが気になって読み進めるのだが、謎は一向に解ける様子がない。
だが、仇討の目撃者たちが語る自身の半生が、一つ一つとてつもなく味わい深い。
どの人物も魅力的で、いつまでも話を聞いていたくなる。
そして、人々の話が積み重なるうちに、この仇討にまつわる少し違った面が見えてくる……。

全6幕で構成される小説だが、途中から「えっ!?」と驚いたり、「ああ……!」と納得したりすることが増えてきて、最後はもう言葉もなかった。
極上の推理小説ともいえるし、泣ける人情ドラマともいえるし、誇りある仕事の話といっていいかもしれない。
ひっくるめていえば、抜群に面白くて気持ちが温かくなる小説。
知り合いのすべてにおススメしたい。