研究資料 空想科学研究所

推薦図書

主任研究室の本棚に並ぶ数々の科学の書。
その中から読者の皆さんにぜひ読んでいただきたい本を、紹介していきます。

ゾウの時間ネズミの時間『机の上で飼える小さな生き物』
(木村義志著/草思社)

 大ヒットした漫画で、アニメやらテレビコマーシャルでおなじみの『ど根性ガエル』のピョン吉は、いつもヒロシのシャツに張り付いて暮らしている。あれでは体表の粘膜が乾いてしまい、すぐに死んでしまうのではないか。では、どのような環境にすれば、ピョン吉は生きながらえるのだろう?
 という疑問がにわかに湧いてきた僕は、早速本屋さんに飛んでいった。その時、何冊か手にとってみて、一番光っていた本が、この『机の上で飼える小さな生き物』である。
 著者は特段、カエルの学者ではない。いわば市井の実学者として、自らカエルや昆虫などさまざまな生き物を飼い、それらをマニアックなまでによく観察して体験をまとめた。
 僕の田舎でもそうだが、地方に行くと生物や植物などについてやたら詳しい物知りおじさんが散見される。僕が著者に抱いたイメージはそれである。そして、そういう実体験にもとづいた情報こそ、実に貴重だしそれをたくさん持っている人を僕はこよなく尊敬する。
 さて、木村さんがこの本で述べている「カエルの飼い方」によると、都会生活者がカエルを飼う場合、いちばん役立つのはとにかくゴキブリをいっぱい飼うことだという。どういうことかというと、まず都会にはゴキブリが多い。カエルの餌には生きたゴキブリが適している。死んだやつはダメだ。なぜかというと、カエルの目は動くものしか認識できないのだ。
 では、どうやって生きたゴキブリを集めるか?これも案外簡単で、口の小さなビンの中に蛇腹状に折った紙と食べ残しのカスを入れておくだけでよい。あとはゴキちゃんが勝手に入ってくれる。ゴキブリホイホイなんて目じゃないほど獲れる。相当な数が入ったら、空気穴の開いたふたをして繁殖させる。ここからカエル君にごちそうを出せばいいのである。
 これは名案であろう。この本にはそういう実践に役立つ知恵が満載されている。
 そう言えば、科学者には子どもの頃、昆虫採取に熱中していたという人がけっこう多い。解剖学者の養老孟さんもその一人という話を聞いたことがある。
 僕が思うに、昆虫採取ではかなり頭を使う必要がある。最初はなんと言っても昆虫に対する好奇心があったはずだ。僕もそうだったが、見知らぬ昆虫との出会いにはわくわくしたものである。次いで、どうやったら採取できるのかという実践に入る。ここでも頭を使わなくてはならない。そして、採取してきたら「どう飼うか?」。また、どんな種類(分類)なのかという知的好奇心もふつふつと湧いてくる。要するに、頭と身体をフル動員させないといっぱしの昆虫マニアにはなれないのである。
 科学者に昆虫好きが多い理由は、たぶんこの辺にあるのだろう。

 

(『なぜ僕は理科を好きになったのだろう?』巻末付録:〈子どもを理科好きにするためのおススメ本●僕はこんな本を読んできた〉より)

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