研究資料 空想科学研究所
推薦図書
主任研究室の本棚に並ぶ数々の科学の書。
その中から読者の皆さんにぜひ読んでいただきたい本を、紹介していきます。
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『かがくのほん』(シリーズ) |
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『比較大図鑑』 |
この2冊を同時に取り上げたのは、どちらも一言で言って宇宙の広がりを感じ取ることができる本だからである。
いずれも大判で、絵が実にいい。その絵がまたとても具体的なイラストだから、幼い子ども(小学生あたりにちょうどいい)であっても内容がよく把握できる。いまどきの子どもたちは、字を追っていくだけでも疲れるという傾向がある。そんな子どもでも、大きめの図鑑なら喜んで読み進めるという事実を僕は知っている。
『かがくのほん』は、加古里子の絵本という形だが、「海」とか「人間」とか「宇宙」といったテーマ別に同じ体裁で何巻かシリーズで出ている。すべて優れた仕事ぶりと言える。その中でも僕のおススメは『かがくのほん/宇宙――そのひろがりをしろう』だ。
広大な宇宙とは一言で言うものの、あまりに茫漠としたイメージしか思い浮かばないのが普通だ。そこに具体的なイメージ、というか宇宙の大きさを感得させてくれるのが、この本の大きな魅力なのである。
これと併せて読みたいのが、『比較大図鑑』。これは、加古里子の本に比べると、より身近な物から始めて、やがて大宇宙のスケールまで話が広がっていく。とても科学的なアプローチだ。
身近なものとしては、たとえばヒトの大腿骨のイラストが実物大で描かれている。50センチほどのもので、「さすがヨーロッパ人はでかい」と実感できる。あたかも子どもが初めて科学博物館に連れられて行き、マンモスの牙などを目の当たりにして喜んだ時の実感といえば当たっているだろう。ひと昔前までは、子どもたちにとって博物館はワンダーランドだったのだ。この『比較大図鑑』には博物館に感じられたような「センス・オブ・ワンダー(不思議感覚とでも言おうか)」が備わっているように思う。
では、僕たちにとって宇宙はどのくらいのスケールを示す言葉なのか? 『比較大図鑑』の内容に添って考えてみよう。
毛利衛さんとか若田光一さんら日本人宇宙飛行士の活躍はマスコミを賑わす。その報道の中に使われる「宇宙」という言葉は、いったいどの範囲を指しているのか考えたことがあるだろうか?
スペースシャトルとか宇宙ステーションが飛んでいる軌道は、最大でも高度400キロメートルという高さにある。地球の半径は6400キロだから、その軌道の高さは16分の1。衛星の高度は、地球表面からそれだけ離れているということだ。地球を半径16センチのボールにたとえれば、ボールの表面からわずか1センチしか離れていないという計算になる。これを太陽系全体から見れば、スペースシャトルはまるで地球表面上をハイハイしながら動いているようなものだ。
地球を取り巻く大気圏は、高度100キロまでだと言われている。スペースシャトルからすれば、心細くなるほど低い位置までしか大気はない。このことも大きなスケールから見れば、地球の大気圏は金箔細工のように極めて薄く表面に張り付いていると言えるのだ。地球環境の脆弱さは、このようにさまざまなスケールを当てて考えてみれば手に取るように理解できる。
宇宙の実感は、その言葉を受け取る人の行動によってさまざまだ。かつてアポロ計画で月の表面に降り立った宇宙飛行士にとっては、月と地球の距離が「宇宙」のすべてであったかもしれない。
映画〈2001年宇宙の旅〉(*1)の中では、木星の衛星軌道上に到達した宇宙船のクルーと地球の管制官とが連絡を取り合うシーンがあった。地球と木星は近日点でも6億キロほど離れている。光の速さは秒速約30万キロ。だから、電波が届くまでに片道2000秒、ほぼ33分間かかる。応答が必要であれば、往復だからゆうに1時間以上はかかる。この悠長な距離感が、この映画から実感できた。
映画〈スターウォーズ〉の舞台は、僕たちの住むこの銀河である。主人公のルーク・スカイウォーカーにとっての「宇宙」とはそんなスケールである。漫画家の松本零士が描いた『宇宙戦艦ヤマト』は、マゼラン星雲に行って帰ってきたから、片道14万8000光年を旅してきたことになる。ウルトラマンは300万光年の彼方にあるM78星雲から地球にやってきた。ウルトラマンにとっては、それが「宇宙」の実感のはずだ。
観察可能な宇宙の果ては、地球から見て半径137億光年ということだから、一番端っこの星が観察できたとして、観察者は、137億年前の星の姿を見ていることになる。137億年前といえば、ビックバンでこの宇宙が誕生したときだ。
こう考えると、タイムマシーンは現実のものなのだ。僕たちは地球というタイムマシーンに乗りながら、過去の宇宙を見ている。
ここにおススメした2冊の本は、いずれも子どもたちに与える夢を育んでくれる。つまり「科学の芽」に満ち溢れているのである。
*1〈2001年宇宙の旅〉
イギリスを代表する映画監督、スタンリー・キューブリックが作ったアメリカSF映画(1968年公開)。哲学的な暗示に満ちているうえ、特殊効果が当時の水準をはるかに超えていたため、こんにちでは「画期的なSF映画」という評価を得ている。
(『なぜ僕は理科を好きになったのだろう?』巻末付録:〈子どもを理科好きにするためのおススメ本●僕はこんな本を読んできた〉より)

